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利尻町立博物館

利尻島の自然トピックス



 利尻島には火山活動によってつくられた独特の地形があり、そこには多種多様な生物が生息しています。近年も多数の研究者が訪れ、その地質や生物相などの調査が行われています。当館では標本や研究論文などを含む資料収集を行っているほか、現地調査や観察会の実施、研究者のサポート等を行っています。
 



沓形溶岩流
利尻町栄浜地区の沓形溶岩流。溶岩の表面はなめらかであることがわかります。

利尻島の地史

 利尻島は標高1,721mの利尻山を有する火山島です。更新世後期から8000年前まで活動していたと考えられており(石塚, 1999)、気象庁によって活火山の一つとして指定されています(気象庁, 公開日不明).利尻火山は成層火山で、富士山や浅間山などと同様に、噴火で中央火道から流れ出た火砕流や溶岩流に繰り返し被覆されたことによって形成されました。この溶岩流のうちの一つである沓形溶岩流は利尻島において最も広範囲に流れた溶岩流で、表面がなめらかで、トウやローブと呼ばれる突起状の構造を作ることが特徴のパホイホイ溶岩です。この溶岩は沓形溶岩流は、さまざまな分析により2~3万年前に流れたと考えられています(Kuritani et al., 2007; 植木・近藤, 2008; 近藤・塚本, 2009)。最新の活動は3500年前ごろまで続いたと推定されており(近藤ほか, 2015;佐藤ほか, 2013)、島の南部には当時の火山活動によって形成された溶岩やスコリア丘、マールがあります。


リシリヒナゲシ
利尻山山頂部に生息するリシリヒナゲシ。最近の研究でチシマヒナゲシはリシリヒナゲシの亜種として扱うのが妥当であると考えられています。(Takahashi & Yamagishi, 2020)

利尻島の植物

 利尻島では1888年の堀氏による調査を皮切りに植物調査が行われてきました(川上 1900)。数々の調査の結果、670種以上もの植物が生息していることが報告され(松野, 1984)、リシリヒナゲシやリシリアザミなど利尻島固有の種や亜種が生息することも知られています。
 また、利尻山の南斜面にはチシマザクラが自生し、群落をつくっています。チシマザクラは散生することが多く、大きな群落は報告されていなかったため、およそ400本にも及ぶこの群落は「利尻島のチシマザクラ自生地」として北海道の指定文化財にされています(北海道教育委員会, 1978; 北海道, 更新日不明; 利尻町, 2000)。
 多様な寒地植物が生息する一方で、近年ではオオハンゴンソウやコバノハイキンボウゲを含む124種もの外来種が移入していることも報告されています(五十嵐, 2013)。当館では、定期的に外来種防除会を開催し、利尻島固有の植生を保護する活動も行っています。なお、防除会開催のお知らせは博物館だより「リイシリ」に掲載していますので、機会がありましたら、ぜひご参加ください。

→博物館だより「リイシリ」


ノボリリュウ
ノボリリュウというキノコ。利尻島では秋ごろに見られます。

利尻島の菌類

利尻島では島民によってキノコ狩りが行われていますが、調査研究はあまり行われてきませんでした。これまで、田北(1968)のほか、1996~1998年に行われた北海道キノコの会による調査によって,200種をこえる菌類が報告されています(佐藤ほか, 1998; 佐藤・佐藤, 1999, 佐藤, 2010)。


利尻島の動物

リシリノセアカマックレイオサムシ
利尻山で観察されたリシリノマックレイセアカオサムシ。

昆虫

 これまで多数の昆虫が利尻島から報告されており、中には利尻島固有種や高山性の種も知られています。利尻島および礼文島固有種であるトゲバネイソネジレオバエは、夏季に岩礁でよく見られます(佐藤, 2013)。 高山性の種であるダイセツタカネフキバッタ、リシリノマックレイセアカオサムシなどは利尻山の山頂周辺の高山植物や岩の上で見られます。寒冷な気候が生息に適しており、氷河期には今より広い範囲に生息していたと考えられています。しかし、氷河時代が終わりを迎えるとともに、気温が上昇し、寒冷な高山帯に局所的に生息するようになったのではないかと推測されています(Tatsuta et al., 1994; Imura, 2004)


ミミエボシ
フジツボのなかまのミミエボシ。利尻町沓形地区に漂着したオウギハクジラの歯に付着していました(冨岡ほか, 2020)。

海産無脊椎動物

 脊椎(≒背骨)をもたない動物を脊椎動物と区別して「無脊椎動物」とよびます。利尻島沿岸では、環形動物門(ゴカイのなかま)や棘皮動物門(ウニやヒトデのなかま)などの一部の分類群において、1990年代以降、専門家による生物相の調査が行われ、利尻島沿岸の生物多様性の理解が進められてきました。沿岸海域は寒流であるリマン海流を受けることから、北海道やロシアの沿岸域と共通する北方系の種が多く生息していることが報告されている一方で(e.g. 利尻町史, 2000)、暖流の対馬海流によって分散していると考えられる南方系の種が報告される例もあり(小松ほか, 2007; 太田ほか, 2020)、寒冷地でありながら南方の動物も分布していることが明らかになってきました。近年では利尻島沿岸で採集された生物が、新種として報告されている例もあり(Okamoto et al., 2020; Kobayashi & Fujita, 2023)、調査がほとんど行われていない分類群については当然ながら、すでに大規模に調査が行われた分類群についても10m以上の水深帯については調査が不十分であるなど(小林ほか, 2019)、より深い水深帯での調査などにより、さらなる多様性の解明が期待されます。
 


コマドリ
コマドリ。かつては羽色の違いからコマドリの亜種「リシリコマドリ」として扱われていましたが(黒田, 1956)、その違いは時期や個体間での変異であると考えられ、現在はまたコマドリとして扱われています(Seki et al. 2012; 日本鳥学会, 2012)。

鳥類

 1960年代ごろから、利尻島内外の専門家により鳥類の生息状況や生態に関する研究が進められています。また、 1993年からは標識調査が継続して実施されており、利尻島内の鳥類相の解明のほか、寿命や移動などの生態の解明にも寄与しています(小杉, 1994)。これらの研究の結果、 2023年現在で326種が島内から報告されています(利尻島自然情報センター, 2017; 田牧, 2019; 西島, 2022)。 1年中島にとどまっている留鳥が含まれているほか、繁殖地や越冬地への渡りを行う旅鳥たちの飛来が多く報告されています。

 夏季にはウミネコやオオセグロカモメをはじめとする海鳥類が多数繁殖しており、その生態に関する調査が盛んにおこなわれています( e.g. Kazama et al. 2016)。



リス
シマリス。背面に縞模様があることが特徴。島内の林道や登山道のほか、博物館の裏庭に現れることもあります。

哺乳類

 海で隔てられた利尻島内には、シマリス、ネズミ類、トガリネズミ類、コウモリ類の生息が報告されています(利尻町, 2000)。利尻島のように大陸や北海道本島から海で隔てられている場所には、陸続きになっていた氷河期の渡来や飛翔や遊泳によって渡ってきたと考えられるもののほか、ノネズミ駆除や毛皮の生産のためにニホンイタチやミンクが持ち込まれています(犬養, 1943; 利尻町, 2000)。また、周辺海域からはトドやゴマフアザラシのほかイルカやクジラ類の海棲哺乳類も報告されています。利尻島、礼文島、稚内を結ぶ利礼航路では、フェリーの甲板からその姿を観察できることもあります(杉村, 2004)。

 また、近年では哺乳類に寄生する生物の研究も行われており、島内のマダニ相の調査のほか(新倉ほか, 2020)、寄生性の条虫類(佐々木ほか, 2021)、線虫類(鈴木ほか, 2019)などの分布も報告されています。



参考文献

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